以前、掲載したように松竹ヌーベルバーグとは、それまで松竹の伝統としてあった人情の機微を描いた(今でも寅さんとかで山田洋次が受け継いでいますが)松竹映画と大きく異なる映画を指します。
本家フランスヌーベルバーグと大きく異なるのは、仏では素人同然の批評家達が街にカメラを持って撮影したのに対して、日本の場合は、松竹に入社しており、助監督として務めていた人達が、行き詰まり等を感じていたプロデューサーらによってデビューしております。
代表的な監督は、大島渚、篠田正浩、吉田喜重(ヨシダキジュウ)です。
いずれも1960年頃にデビューしています。
その頃の代表的な作品に、大島渚「青春残酷物語」篠田正浩「乾いた花」吉田喜重「戒厳令」があります。
青春残酷物語
乾いた花
戒厳令
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その後、彼らは松竹会社に納まりきらず、活動の場をATGに移します。
退社前、大島渚は全学連と学生運動を描いた「日本の夜と霧」という作品を制作しました。この作品は、当時安保闘争で盛り上がっていた時期に公開されましたが、過激な内容のためか確か1ヶ月足らずで公開中止となっています。
日本の夜と霧注)購入を検討の方は画像かタイトル名をクリックしてください。ATGに活動の場を移した彼らは、それぞれ篠田正浩「心中天網島」吉田喜重「エロス+虐殺」大島渚「絞死刑」などの実験作を発表しています。
心中天網島
絞死刑注)購入を検討の方は画像かタイトル名をクリックしてください。大島渚は、体制批判、性をテーマに取り続けていました。この「絞死刑」は死刑制度を真っ向から取り組んでおり、国からの援助の下、映画を製作している仏の映画監督から「僕達は、こんな映画は撮れない」と言わせたほどです。大島渚は、その後「少年」という秀作を撮り、今までの集大成的な意味を持つ「儀式」を監督しました。
儀式その後、大島渚は性のテーマを上手く昇華させた「マックス、モン・アムール」を仏のスタッフとともに撮り、淀川長治氏に「大人になったね」といわれ大島監督は大いに喜んだらしいです。この「マックス、モン・アムール」の撮影監督は本家ヌーベルバーグの旗手ジャン・リュック・ゴダールの撮影監督を務めているラウル・クタールです。
マックス・モン・アムール篠田正浩監督は「少年時代」などの話題作を撮り続け、2003年の「スパイ・ゾルゲ」で引退を表明しています。
大島渚監督は、大病を患い、一時は再起不能かとも言われましたが1999年に「御法度」を発表しています。
人間の約束吉田喜重監督は、1973年の「戒厳令」以来沈黙を守っていましたが、1986年、当時、社会問題となっていた老人の痴呆をテーマにサスペンス風に仕上げた「人間の約束」でカムバックし、2002年にも妻の岡田茉莉子を主演の一人に迎え、「鏡の女たち」を発表しています。
鏡の女たちちなみに、この三監督の奥さんはいずれも女優で大島渚の妻は小山明子、篠田正浩の妻は、あの岩下志麻です。また、大島渚は京大、吉田喜重は東大、篠田正浩は確か早稲田といずれも高学歴です。
余談ですが、本家仏ヌーベルバーグの監督たちには、これら松竹ヌーベルバーグの作品は影響を与えず、中平康(ナカヒラコウ)監督の「狂った果実」(1956)が大きな影響を与えたそうです。この作品は、原作者石原慎太郎自ら脚色し、石原裕次郎が主演しています。
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